■「宝塚の奥座敷、武田尾温泉」(大阪 宝塚/温泉)

ローカル線で行く温泉の旅(温泉/ライター 井上晴雄)
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■「宝塚の奥座敷、武田尾温泉」(大阪 宝塚/温泉)

[武田尾温泉]
 武庫川上流、天狗嶽の渓谷に湧く湯

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武田尾温泉は武田直蔵という木こりが寛永18年(1641年)、武庫川上流の渓谷沿いに湧き出る湯を発見したと伝えられる温泉。大阪や神戸からのアクセスが便利で、喧騒から離れて束の間の休息を求める多忙人にも格別の隠れ家を提供する。何故かガイドブックではあまり頻繁に取り上げられていないものの、足を運んだ友人からの評判が抜群だったので一度訪れてみようと思った。
 
大阪からJR福知山線快速に乗車。30分ほど走行した後、宝塚で普通に乗り換えて最寄り駅の武田尾駅へ。列車は、華やかな宝塚の市街地からトンネルを幾つか抜けて深い緑の中へ。都会からほんの少し離れただけなのに、宝塚から2駅目にあたる武田尾駅に近づく頃にはすっかり秘境の風景。高架の駅を階段で 1階改札まで下りると、武庫川の清流に渓谷が迫り、それを取り囲むようにそびえる深閑な山々にはヒグラシが染み渡るように鳴いていた。
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武田尾駅の付近はコンビニエンスストアはおろか数軒の旅館と民家しかなく、乗降客が少ないゆえに無人駅。切符をボックスに入れると道が二手に分かれている。正面の看板にて温泉マークを確認して右折。武庫川を上流へ遡るように遊歩道を3分ほど歩くと、仄かな燈灯が点る薄暗いトンネルに入る。昼間なのに山間の暗がりをくぐって温泉に向かうなど情緒があり、まるで物語の世界へ通じているような不思議な気分にさえなる。しかし、進路に沿って左折すると、すぐに出口が現れ、武庫川にかかる赤い吊り橋の正面に出る。
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この吊り橋は昭和58年に再建された武田尾温泉のシンボル的存在。その燃えるような赤色が周囲の緑と映えて美しい。足場も広いので特に心配には及ばないが少々揺れる。注意しながら渡っていると、右手に山々と渓谷に抱かれた温泉郷が広がりはじめ、数軒の宿がひっそりと立ち並ぶのが見える。それが武田尾温泉の温泉の中心。
 
武庫川の渓谷が上流方向に大きなカーブを描いて続くのを見ながらしばらく歩いた。陽光に透き通るもみじの葉、河川敷でバーベキューを楽しむ若者たち、山懐に静かにたなびく宿の煙。そこには都会生活では味わえないような独特の長閑さがあった。遊歩道を3分ほど歩くと、木戸七蔵が建てたマルキ旅館が静かに佇むのが見える。明治30年に建てられた武田尾最古の歴史を誇る旅館である。○の中にキと書いて旅館名を表示するところも誠にユニークだ。その坂道を2分ほど上って行くと、水上勉の小説「桜守」の中に登場する河鹿荘がある。話中に描かれた茅葺き屋根もまだ健在で、歴史情緒豊かに旅人を迎えてくれた。
武田尾温泉の湯は無色透明で含食塩硫黄泉。神経痛、リウマチ、皮膚病などに効能がある。ダルマの手焼きタイルや岩をくり貫いた岩窟風呂などはこの温泉ならではでゆっくり味わってみたい。清流武庫川のせせらぎを耳をすませ、高々とそびえる天狗嶽を眺望に思いを馳せながら、この渓谷の湯に入っていると、まるで自然と同化するような心地よい気分になり、いつの間にか疲れが取れていた。
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丹波山地や武庫川に抱かれた風光明媚な土地にある武田尾温泉は友人の勧め通り素晴らしい温泉だった。しかも、これほど自然に浸れて心身ともにリラックスできる温泉が大阪から40分ほどの距離にあるとは驚きだ。阪神近辺随一の穴場としてお勧めしたい。


-DATA-

場所:
兵庫県西宮市塩瀬町
交通:
JR福知山線武田尾駅から徒歩8分。または中国自動車道宝塚ICより国道176号線生瀬より6km
駐車場:
各旅館
泉質:
含食塩硫黄泉
(効能:神経痛、リウマチ、皮膚病)
入浴:
マルキ旅館(1,000円)

電話0797−61−0221
 
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プロフィール

shirakawa_1.jpg このたびは、ご訪問、誠にありがとうございます。当サイトは、トラベルライターおよび旅行添乗員の経験がある筆者が、数年かけて日本各地を旅行しながら、取材して作成したものです。温泉、宿、特産品、歴史など観光地の紹介に加え、話題に乏しい地方の田舎町も取り上げることで、地方の活性化にも貢献できればと思っています。今後とも、よろしくお願いします。  (ガイドブック・雑誌等 実績)
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▼井上晴雄.が執筆に携わったガイドブックの一例 ・「旅の雫」(交通新聞社)・「癒しの湯治宿」(山と渓谷社)・「B&Bの宿」(山と渓谷社)・西国33ヶ所ウオーク(JTBパブリッシング)・「花の社寺ウオーク」(JTBパブリッシング)・「まっぷる滋賀」(昭文社)・「全国焼酎めぐり」(学研)・・「まっぷる北近畿」(昭文社)・「関西あそびマップ」(ジアース) 他
(井上晴雄.プロフィール)  昭和52年(1977年)、大阪府堺市に生まれる。 画家、ライターとして、幅広く活躍。朝陽や夜景を はじめとする日本の旅風景を描きつづけている。 株式会社かね善本社(大阪市)に作品約40点が 常設展示されている。個展14回、グループ展9回。 雑誌や新聞での連載。書籍への掲載多数。韓国や豪州など海外出展、豪州日本大使館に作品収蔵。   心の豊かさを感じにくい現代社会。作品を通して、 ひとりでも多くの人々に、「未来への希望」や 「生きる元気」を与えたいと、日々、制作に 取り組んでいる。

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