■「日本三大古湯のひとつ・有馬温泉」(兵庫 有馬/温泉)

ローカル線で行く温泉の旅(温泉/ライター 井上晴雄)
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■「日本三大古湯のひとつ・有馬温泉」(兵庫 有馬/温泉)

1000.jpg有馬温泉

 六甲山を越えた山上にある有馬温泉は、白浜温泉、道後温泉と並ぶ三大古泉の一つとして知られる名湯。仕事柄、地方に訪れる機会が多い私は、白浜と道後の湯には幾度か入らせて頂いたのだが、一番近い筈の有馬に出かける機会は何故か恵まれなかった。日本の最も古き湯を廻ることは古人の生活の足跡を知ることである。台風一過、蝉の時雨とともに本格的な暑さが再来した季節の変わり目を契機に、日本三大古泉の残り一つ、有馬温泉に訪れることにした。



 有馬温泉のルーツを辿れば、大巳貴命と少彦名命が有馬山麓に立ち上る湯煙を発見したところまで遡る。およそ大和朝廷の時代である。それから舒明天皇が632年行幸の際に入湯したとの記録があり、奈良時代には行基が温泉寺などを建立して温泉地として整備している。そのころ既に湯治場として高い知名度を誇っていた有馬温泉だが、その人気に拍車がかかったのは安土桃山時代のこと。戦国の武将として名高い豊臣秀吉が大地震で壊滅的に陥った有馬温泉を修復してからである。秀吉はそれを契機に千利休らを引き連れて幾度となく有馬の地を訪れている。その回数、記録だけでも数十回に及んだというのだから、秀吉がいかに有馬の湯を好んだかがうかがい知れる。また、その度に大掛かりな茶会が催されたため、有馬温泉は文人たちが集う文化の拠点としても発展することになった。


 明治時代に入ると、初代内閣総理大臣の伊藤博文や文豪谷崎潤一郎なども訪れてすっかり「由緒のある」という形容詞が板に付く有馬温泉は、現在では交通機関も整備され、大阪や神戸からも一時間以内で来れるという名湯の名を欲しいがままにしている。



  標高360m、有馬温泉は神戸の奥座敷とされる六甲山北麓にある。小さく開けた有馬盆地は、落葉山、愛宕山、射場山など深い緑に囲まれて盛夏でも比較的冷涼。神戸電鉄有馬温泉駅を下りるとすぐに温泉街が広がりはじめる。右手の愛宕山方向へ歩を進めると近代的なホテルや町屋風の老舗旅館などが立ち並び、温泉街の華やかさを物語っている。太閤橋を渡り、ねね橋を左に見ながら太閤通りを5分ほど行くと、数軒の土産屋を過ぎて右手に観光案内所。それを目印に左方向に目を遣ると、湯元坂と呼ばれるやや急な坂道が愛宕山に向かって伸びている。その勾配を約5分上がり、温泉寺や極楽寺を抜けて「銀泉」の標識に従って歩くと、民家の立ち並ぶ路地に面して和風の一階屋に明かりが灯っているのが見える。そこが平成13年9月にオープンした共同浴場、当日入浴した「銀泉」である。

1001.jpg

鐘楼をイメージしたという「銀の湯」の外観より内部に入ると、真新しい待合室があり、その先に通路が続いていた。フロントにて入湯料を支払うと引き換えに風呂場のロッカーのキーを渡してくれる。通路伝いに15秒ほどで脱衣場。「銀の湯」の浴室は、秀吉が入った岩風呂がモデルになっていることもあり、壁に御影石が埋め込まれているのが特徴的だった。無色透明の湯がまるで岩清水のように湧き出しているようで心地よい。奥には秀吉が入った蒸し風呂をイメージしたサウナもある。



  有馬温泉には金泉、銀泉、炭酸泉と3種の湯があり、それぞれ成分や効用が異なっている。そのため、「有馬の湯は万病に効く」と古くから言い伝えられて重宝されてきた。当日入った「銀の湯」はその内の銀泉で、無色透明のラジウム泉。慢性消化器疾患に効能がある。一方で金泉は鉄を含んで赤茶色。塩辛く(海水の2倍の塩分)とろりとした肌触りが特徴でリウマチ、神経痛、胃腸病などに効用があるとされる。共同浴場で金泉に入れるといえば「有馬温泉会館」が知られていたのだが、現在、改修工事中で、平成14年の秋に「金の湯」としてリニューアルオープンすることになっている。今回は銀泉に入浴したので秋以降に再びこの地を踏んだときは金泉にも浸かることができればと思った。



 風呂から上がって有馬の温泉街を散策してみた。奈良時代に建立の温泉寺は温泉会館から南東に100mほど。その界隈に点在する寺院で参拝をしてから北へ 100mほど路地を進むと天満宮があり、もうもうと湯煙が立ち込めていた。それが有馬温泉泉源井戸。そこだけで地下185mから一日40klもの湯をくみ上げているという。温泉街から少し離れた小高い丘の上に、華やかな温泉街を支える源泉がひっそり佇むことを知ると何とも感慨深い思いがする。星空のような温泉町の明かり、錆びた湯煙の香り、行き交う温泉客の浴衣姿。夕日が山の端に落ち、有馬温泉の賑やかな夜が到来する。


有馬御苑

-DATA-

場所:
兵庫県北区有馬町
交通:
神戸電鉄有馬温泉駅から徒歩10分。または六甲有馬ロープウエー有馬駅より徒歩10分。車なら中国道西宮北ICより県道98号線を南下6km
駐車場:
湯煙広場駐車場など。
泉質:
銀泉(無色透明のラジウム泉。飲用することで慢性消化器疾患に効能。)


 

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プロフィール

shirakawa_1.jpg このたびは、ご訪問、誠にありがとうございます。当サイトは、トラベルライターおよび旅行添乗員の経験がある筆者が、数年かけて日本各地を旅行しながら、取材して作成したものです。温泉、宿、特産品、歴史など観光地の紹介に加え、話題に乏しい地方の田舎町も取り上げることで、地方の活性化にも貢献できればと思っています。今後とも、よろしくお願いします。  (ガイドブック・雑誌等 実績)
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▼井上晴雄.が執筆に携わったガイドブックの一例 ・「旅の雫」(交通新聞社)・「癒しの湯治宿」(山と渓谷社)・「B&Bの宿」(山と渓谷社)・西国33ヶ所ウオーク(JTBパブリッシング)・「花の社寺ウオーク」(JTBパブリッシング)・「まっぷる滋賀」(昭文社)・「全国焼酎めぐり」(学研)・・「まっぷる北近畿」(昭文社)・「関西あそびマップ」(ジアース) 他
(井上晴雄.プロフィール)  昭和52年(1977年)、大阪府堺市に生まれる。 画家、ライターとして、幅広く活躍。朝陽や夜景を はじめとする日本の旅風景を描きつづけている。 株式会社かね善本社(大阪市)に作品約40点が 常設展示されている。個展14回、グループ展9回。 雑誌や新聞での連載。書籍への掲載多数。韓国や豪州など海外出展、豪州日本大使館に作品収蔵。   心の豊かさを感じにくい現代社会。作品を通して、 ひとりでも多くの人々に、「未来への希望」や 「生きる元気」を与えたいと、日々、制作に 取り組んでいる。

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