洞川温泉は、役行者が開いた大峰山山上へ参詣する人々が、疲れを癒す宿泊地として栄えてきた温泉である。
数十年前までは石炭バスで、ふもとの下市口から半日近くかかったと聞くが、今では奈良交通バスで1時間20分ほど、みたらい渓谷の散策も兼ねて今は観光目的のお客も多くなったという。
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そのような山懐に抱かれた土地で長きにわたって独自の文化が守られてきたからか、洞川温泉の宿には、一般の温泉宿にはないような独特の雰囲気を持つ宿が少なくない。
たとえば、襖障子に仕切られた広い客室があったり、役行者や洞川の守り神である後鬼を祀る祭壇を掲げる宿があるといった具合である。
そんな中でお勧めのひとつは、にしぎ旅館。ニジマスやアユが遊泳する山上川の畔に立ち、当地随一の規模の大浴場と、総御影石造りのご婦人風呂を持つ和風旅館である。
洞川温泉バス停から徒歩10分ほど(予約したらバス停まで車で迎えに来てくれる)、1900年に建てられた木造2階建ての本館の奥に、1999年に建てた新館が続いている。
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客室は13室あり、いずれも山上講の名残のためか広々していて過ごしやすい。床の間には季節の掛け軸や生花、木彫りが飾られていて、心温まる。窓外には山上川の流れのはるかに大峰連山を見渡すことができる。
風呂は、山上川畔より湧出する摂氏26度のアルカリ性の温泉が引かれていて、20人近く入れそうな広々とした大浴場で身体を伸ばすことができる。
ライトグリーンとブラウンをベースにしたやわらかい色調で、館内にいながら自然の中にいるような実感が湧く。耳を澄ませば、窓外に流れる山上川の瀬音が聞こえてくるのもよい。
温泉は神経痛や慢性消化器病や疲労回復などに効能があり、昔から美人の湯として知られているだけに、肌がスベスベになる。
にしぎの料理は、日本名水百選に指定されている洞川湧水群の水を使った自慢の逸品が並ぶ。
冬はボタン鍋や湯豆腐、夏は名水冷奴や川魚の塩焼きなど、洞川ならではの季節の味覚を楽しめる。中でも珍味の鹿刺しは、洞川温泉の名物で、玉ねぎの千切りが添えられた柔らい赤身は、くせのなく、口の中でとろける独特の食感を味わえる。
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翌日、しんしん冷える洞川は雪が30センチも積もり、道は凍りついていた。深い茶色の町並みと雪の白のコントラストがモノクロ写真のようで美しい。
「田舎の温泉宿でまたゆっくりくつろいで下さい。」という亭主の言葉を思い出す。
家族経営でアットホームな和風旅館だけに、次来るときがまた楽しみだ。
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観峯荘にしぎ
TEL:0747-64-0339
FAX:0747-64-0559
〒 638-0431
住所 奈良県吉野郡天川村洞川251
料金:1泊2食付き:10000円〜
1泊朝食付き:7000円〜
素泊まり:6000円〜
(税別・サ込み)
交通:近鉄下市口駅から洞川温泉行き奈良交通バス1時間20分、徒歩10分
